親知らずとは、1番最後に生えてくる奥歯で、智歯とも呼ばれます。標準的には18〜20歳の頃に生え、本来、よく噛んで食べるときに役立つはずの存在でした。
ところが、現代人のあごの骨格は、食事が柔らかくなるにしたがって、スリム化する傾向にあり、発育が不十分であることが珍しくありません。先に生え揃っている永久歯の歯列が並ぶだけでも、あごのスペースはいっぱいいっぱいで、親知らずのスペースがないために、既に生えている永久歯に引っかかって埋まったままになったり、間違えた方向に生えて、トラブルの原因になるケースが大変多いのです。そこで、既に生えている永久歯を傷めてしまう場合は、あまり遅くならないうちに親知らずを抜くことになります。
親知らずは、隣の第二大臼歯に比べて歯根が短く、噛む力も、噛み合わせに担っている役割も小さくなっているのです。先天的に全く生えない人も増えていますが、実際のところ、親知らずがない為に不自由しているという人はまずいないでしょう。
そこで、既に生え揃っている永久歯を、後から生えてきた親知らずが傷めてしまう場合、親知らずを抜き、重要な役割を果たしている他の永久歯を大切に守ることになります。もちろん、正常に生えて、上下がきちんと噛み合っている親知らずならば、抜く必要は全くありません。
こうなる前に抜きましょう!
①隣の歯が虫歯に。
歯茎の下に出来た虫歯の治療はが技術的に難しく大掛かりになりがちです。
細菌や食べかすが親知らずの下に入り込むと、取り除くのが難しく不潔になりやすい為に虫歯ができてしまいます。
しかもこの虫歯は歯茎の下にでき、外から見えにくく、気付いた時には大きく広がっている事もあります。
②歯を支える骨を失う。
炎症のために歯を支える骨が溶け、支えを失った隣の歯がグラグラになることがあります。
親知らずの下に入り込んだ細菌や食べかすのために炎症が起き、歯茎が腫れて、歯を支える周りの骨まで失ってしまいます。
最初は軽い炎症が慢性的に続き、疲れたり風邪を引いたときなどに発作的に腫れます。
これを放置し繰り返していると、痛みや腫れが悪化して、頬や扁桃腺まで腫れたり、全身に熱が出ることすらあります。
③歯並びや噛み合わせが悪化。
親知らずに押された歯が倒れ、矯正治療が必要になることがあります。
親知らずに押された歯が倒れて、歯並びが悪くなります。また、噛み合わせの悪化を招くこともあります。
例えば下顎の奥歯が倒れると、上顎の奥歯と噛み合わなくなってしまいます。噛み合わせが悪化すると、食事に支障が出たり、顎関節症の原因になります。
●抜く前に気をつける事
余裕をみて、なるべく抜歯後2週間は大事な用事の入っていない日程にしてください。
連休前などの抜歯は、いざ痛い時、歯科医院も閉まってしまうので避けましょう。
●抜いた後気をつける事
痛みは通常1〜4日ほど続き、腫れは4日〜1週間ほど、口も開きにくいです。
熱が出ることもあるので、とくに当日は安静にお過ごしください。
埋伏している親知らずの抜歯は、歯を削って抜かざるを得ないため、痛い、腫れる、という過程を踏まざるを得ません。
ですが、この山を越えさえすれば、一生使う奥歯を虫歯にしてしまったり、様々なトラブルを起こす元凶から解放される事ができます。治療の必要性を是非ご理解いただき、手遅れにならないうちに抜きましょう。
抜歯さえすれば、適切な歯磨きと定期的なメンテナンスで歯を守っていくことのできる、口腔内の条件が整えられます。
しっかり磨いているのに腫れる、噛み合わせの違和感が、辛い、などの症状を引き起こす明らかな元凶が、口の中からなくなるのです。しばらくの辛抱です。頑張って乗り越えていきましょう。